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卒展webインタビューvol.6 この世界と私と音楽と。

音環卒展2025まであと1週間を切りました…!各研究室から一人ずつインタビューに答えてもらいそれぞれの作品や研究についてじっくり話を聞いていく連載企画も最終回です。第六回はプロジェクトアートプロデュースの毛利研究室に所属している遠入夏希さん。インタビュワーが同じ毛利研ということもあり、インタビューというよりも対談になってしまいました…なので毛利研トーク(?)をどうぞお楽しみください。



遠入夏希さん
遠入夏希さん


遠藤:ここまでインタビュワー&構成を担当してきましたが卒展web連載企画もついに最終回です…最後はこの人しかいない!ということで。


遠入:私は音環はおろか毛利研を代表できるような学生じゃないけど、大丈夫かな。


遠藤:他とは存在感が違いますから。卒業研究も遠入スタイルを解き放ってましたね。論考というかパフォーマンスといいましょうか、遠入さんがピアノアルバムを作ってそれを人に聞いてもらって手紙を書いてもらう、という。びっくりしたのは、手紙を書いてもらう人の中にはレコード屋の店長さんという方もいましたよね。あとはエンジニアの方とか。裏方に見えるような人も遠入さんの演奏に感化されてこんなに文章を書かれるんだと思いました。


遠入:宝物の数々…うっとりしちゃう。


遠藤:うっとり…しますね。僕はアルバムの音源を聞かせてもらって音楽を表現することに対するピュアさみたいなものを感じましたし、こんなに染み渡るピアノを久しぶりに聞きました。自作のピアノアルバムに対して、手紙という形でお返事をもらってみて、いかがでしたか。


遠入:そもそも自分が自分の音楽を言語化できないこととか、色んな挫折から生まれたプロジェクトなんだけど、みんなからのお返事をもらってみて…それはもう本当に宝物です。音楽は聞いてくれる人がいることによって成り立つと思うから。どう聞くかっていうのは人それぞれ違っていて、私自身がこだわっている部分とはまた別で新しい何かを見出してくれたり。同じ音楽でもそれぞれの目線によって全然違うものが照射されてたりする。


遠藤:例えば森田童子の「ぼくたちの失敗」の演奏がアルバムの中にありましたけど、それに対して尾上さん(遠入さんの盟友で音環卒業生)が書いた手紙はジェンダー論に切り込んだとても批評性があるもので面白かったです。遠入さんには「ぼくたちの失敗」はどう聞こえているんですか。


遠入:私はパッヘルベルの「カノン」と結びつけたんだけど、それはどちらもD durだし、同じコードの繰り返しの中で物語が展開していく感じが自然に重なってるように私には聞こえたから。

あとは芸大生活の中では少し、音楽のジャンルに対する葛藤があって…何て言うんだろう、例えば芸大の中では「芸術音楽」として演奏されることはない音楽でも、自分の人生を励ましてくれるような音楽っていっぱいあるやん?ポップスでもなんでも。そういう音楽と「芸術作品」とされるもの、どちらも私にとっては繋がっているんだよね。


遠藤:なるほど。ジャンルというものを越えたいというか、そもそも区別してないというか。


遠入:で、尾上さんは社会的な背景とか歴史的な文脈、他の楽曲との比較の中で浮かび上がるこの歌の解釈を言葉にしてくれて。私はそういう風に聞いたことがなかったから、同じ曲を聞くのでもこんなに違うんだって。


遠藤:でもこんなにも愛のある手紙をみんなが書いてくれるってことは遠入さんの弾くピアノには人を触発させる何かがあるんでしょうね。言葉にしたくなっちゃうというか。


遠入:私自身がどうしても言葉にできないから…

論文を書かないといけないとなった時に、自分や自分の音楽を客観的に見ることができないことに悩み続けて苦しかったけど、自分のそばにいてくれた大切な人たちに音楽を送りたかった。


遠藤:この世界と「私」と音楽が遠入さんの中で一体となっているんだと思います。だから客観視する隙間なんてない!という感じなのかも。逆に、今の時代って客観視したがるというか、言語化ブームじゃないですか。ドラマとか皆すぐ考察したがるし。そういう時代において、自分の音楽を自分でいかに言語化できるか、というのは音環生に求められてることですよね。遠入さんの場合、言語化するということに対して、ある意味で解体しているというか、本人はそこまで考えてないでしょうけど、一石を投じているなと思います。


遠入:私も一応、なんにも考えてないわけではなくて……感じてるのよ!感じてることはたくさんあるんだけど、それを言葉や論理にするのが苦手。なんか私文末を断定の「だ」で終われない。でも音環では周りに考えたり、言葉にすることが上手な人がたくさんいて。だからそういう人たちと勉強できたことは本当によかった。

遠藤くんとかもそうじゃない?


遠藤:言葉にしなきゃ伝わんないじゃんと思うこともありつつ、でもSNSでは言語化した結果、貶し合ったりする状況もあるわけですよね…だから必ずしもいいことではないと思います。言葉にしなくてもいい表現はたくさんありますしね。遠入さんの場合はあらゆるものを吸収した上でそのアウトプットが「だ」で終わるような文章じゃないということなのかな。


遠入:そうなのかもしれない。逆に今度は遠藤くんに話を聞きたいんやけど、遠藤くんは藝祭で副委員長とアートパスで委員長、今回の卒展でも副委員長やってさ、大きい組織を動かしてるわけやん。こういうインタビュー企画は今年の卒展で新しく始めたよね?


遠藤:大したことはしてないんですが、役職やりすぎですね本当に(笑)アートパスの時もweb対談企画をやって今回の卒展でもインタビュー企画をやっているわけですが、やっぱり音環についてわからないと言われることも多い中で、発信しないと届かないよね、というのはあります。それこそ言語化したいという思いが強いのかもしれません。でもこれは遠入さんがアートパスの時にやってた発表者の人とのトーク企画を参考にしてるんですよ!エントランスで誰もが入りやすい状態で行われてたので、クローズドになってしまいがちな雰囲気をオープンな感じに変えてくれたと思います。


遠入:そう、あれはコロナの後に人との繋がりをもっと持ちたいと思ってやったことだったから。でも来年それを執行部でやってくれるとは思わんかった。今回もさ、インタビューをやったりとか新しく始めたことも絶対次の代にまた影響があるし、そうやって人は繋がっていくんですね…!


遠藤:僕の卒業研究のテーマは日本と台湾のインディーズシーンがどのように交流してきたのか、ということなんですが、ライブハウスのオーナーでありプロモーターでもある寺尾ブッタさんという方にインタビューして、あらゆる人との繋がりを大切にされながら越境してるんだなと感じていて。またこのwebインタビュー企画でも人との繋がりについてほぼ全員が言及していたので、やっぱり大学4年間経てそこに皆行き着くのかも…


遠入:なるほど。去年のアートパスもチラッとのぞいたら、研究室を越えて作品を一緒に作ったりしてる人とかもいて、素敵…!と思った。自分たちの時にはなかったよね。


遠藤:音環も専門領域が高度になればなるほどタコツボ化しがちなので、乗り越えていけたらいいですよね!…ということで、恒例のメインビジュアルに絡めた質問をするわけですが、今回は今までに話した内容が答えということですかね。


遠入:そうですね…やっぱり出会いですね。尊敬する素敵な先生や仲間と出会えたこと。なんか泣きそうになってくるわ。本当にみんなと出会えてよかった…(涙)

こんなんでいいんだろうか、編集がんばってな。


遠藤:その思いは皆共通して持ってると思いますよ!最後まで遠入さんらしかったです。インタビュー企画はこれで終了となりますが、取り上げられなかった音環生そして大学院音楽音響創造の学生がたくさんいます。それぞれがどのような研究をしているのか、頭の中を覗いてみるような気持ちでぜひ千住キャンパスへお越しください!あなたの「輪」が広がるかもしれませんよ。



◎遠入夏希さんの作品発表は音楽演習室2で常設展示、2/16(日)16:00〜17:00にスタジオAにて公演を行います。

主催:卒業研究発表会2025実行委員会

助成:武藤舞音楽環境創造研究助成金

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